過失割合を押し付けてきたら:自動車事故の交渉術

「この事故の過失割合は判例で決まっているんです」
自動車事故では、多くの場合、お互いの過失割合(責任割合)を話し合いで決定する(示談)。
その交渉の場面で、保険会社の事故担当者が被害者や契約者に対し、こういう話法を使って説得しようとすることがある。

よくある事故担当者の話法

・動いている車同士の事故に100:0はありえない
・この事故の過失割合は法律で決まっている
・過失割合は過去の判例でこう決まっている
・どこの保険会社も同じ
・納得できないなら裁判してください


【解説】

保険会社は実務上、「『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(通称:「判例タイムズ」)」と呼ばれる本を参考に、過失割合の交渉を行っている。

「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」とは・・・
東京地裁民事交通第27部の裁判官が中心となった「東京地裁民事交通訴訟研究会」によって編集されたもので、 交通事故を様々なパターンに類型化し、その過失割合を策定したもので、保険会社の査定実務におけるバイブル的な存在である。


判例タイムズでは、パターンごとの「基本割合」に様々な「修正要素」を適用して、最終的な過失割合を算出する。
この判例タイムズを利用する保険実務では、
・事故の状況にあった判例タイムズのパターンを選択できるか
・基本割合からどのような修正要素を適用していくのか
といったところに、その事故担当者の力量が試される。

交通事故の過失割合で納得出来ない場合は、この「別冊判例タイムズ」を購入して、「修正要素」を頭に入れて、修正要素を適用できないか自分の事故担当者か相手方の事故担当者と交渉するのがいいだろう。

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ここで注意しておきたいことは、判例タイムズはあくまでも「基準」であって、絶対的なものではないということである。
それにもかかわらず、過失割合は「判例タイムズ」で絶対的に決められているかのような発言をしたり、 交渉の余地すらないというような誤解を一般消費者に与える事故担当者が数多く存在している。

素人の被害者や契約者を「裁判例」というような仰々しい言葉で威圧するのは事故担当者の品格の問題だろう。


過失割合は、本来、現場の状況や車の損傷箇所などをよく調査して、客観的にお互いの過失が何であったかを洗い出し、その上で、参考資料として「判例タイムズ」のような 資料を使うべきものなのである。

中でもダイレクトの自動車保険会社の担当者は特に、現場確認をする労力を惜しんだり、車の損傷箇所をみないまま、安易に「判例タイムズ」にあてはめようとする傾向が 強いと感じる。


過失割合をゴリ押しする担当者との交渉テクニック

前述のような話法を使うのは、経験の浅い「素人担当者」と考えてほぼ間違いない。
言葉で威圧しているだけで、業務知識は薄っぺらいことが多いので、恐れる必要はない。


・「過去の判例は単に参考にすべきもので、個別判断すべきものでしょう?」
・「法律で決まっているならその条文を教えてください」
・「現場をご覧になって判断しているのですか?」(相手がダイレクト損保の場合に効果的)
・「お互いの損傷状況をご覧になっていますか?」
・「該当する判例タイムズのコピーを送ってください」
・「判例タイムズの修正要素は何を適用しているのですか?」

ここできちんとした回答や書面を出してくるようであれば、それは「自分自身が単にごねているのかもしれない」と冷静になってみるべきだ。
自分が加入している保険会社の事故担当者に相談をするべきだろう。

注意したいことは、自分の保険会社の事故担当者とケンカをしないこと。
感情的になって自分の保険会社の事故担当者を敵に回したら損をするのは自分だ。


どうしても納得できないなら、調停や少額訴訟という方法もおすすめである。
自分が加入している保険会社の事故担当者に調停や少額訴訟の書類の作成方法や手続方法をアドバイスしてもらおう。

裁判所に提出する書類の作成方法の相談は、電話や郵送ではなかなか難しいだろうから、 事故担当者と面談できる保険会社を選ぶことが重要だ。

その意味では、ダイレクト保険会社を選ぶ場合、事故処理拠点があまりにも遠い会社は避けるべきだ。


 関連ページ:事故処理拠点数の比較


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