まだ隠されている保険金不払い

損保の保険金不払い問題であるが、損保業界が意図的に隠している未払いが実はまだあると私は思っている。

それは「被害事故での『人身傷害保険金』の未払い」である。

人身傷害は今や70%の付帯率(自動車保険契約数に対する人身傷害加入数の割合)という、スタンダードな補償といっても過言ではないほど普及している商品である。
しかし、補償内容は一般の消費者には理解しにくいものであり、保険金の算出方法も複雑な商品である。


例えばこんなケースがあるとする。
<事故状況>
信号待ちをしていたところ、後続の車に追突され、軽いムチ打ちとなった。相手方は任意保険に加入しているとのこと。

<事故当初のやりとり>
とりあえず、自分の加入している保険会社に事故の連絡を入れる。
相手方も任意保険に入っているので、自分の車の修理費や病院の治療費は相手方の保険会社が支払ってくれるとのこと。

<自分の加入している損保担当者の発言>
「相手方の保険で対応してもらえるのであれば、当社としては特に対応することもありませんので、何かあればご相談下さい」
「搭乗者傷害保険にご加入なので、ケガが治った時点でご連絡下さい」

<その後の流れ>
幸いケガも大したことがなく、1ヶ月くらいのの通院で後遺障害もなく治った。
車もきれいに修理されて戻ってきた。
ケガについても、車についても、相手方の損保とスムーズに示談解決できた。
自分の加入している損保担当者にその旨を伝えたら、自分のケガに対して、搭乗者傷害保険金を支払ってくれた。

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上のケースはあくまでも架空のものだが、現場では日常的にあるやりとりである。
では、何がこのケースで「保険金不払い」なのだろうか?

仮に、今回のケースで相手方の保険会社から支払われたケガの賠償金が10万円としよう。
これを仮に、相手方の保険会社ではなく、自分が加入している人身傷害に請求し、保険金を算定してもらうと12万円になる場合、契約者はこの差額の2万円を自分の人身傷害から支払ってもらうことができる。
このような差額部分を契約者から請求される前に、積極的に案内し、支払っている保険会社はどれだけあるだろうか?これを案内していないことは「不払い」そのものではなかろうか?
(人身傷害は保険金を支払ってもノンフリート等級(保険料の無事故割引)には影響しないため、契約者側が自分の人身傷害に差額部分の保険金請求をするデメリットはない)

この事例のように、相手方損保から賠償を受けている契約者に対して、人身傷害の差額部分の支払を案内していない事例が、これまでに損保各社から発表になっている「不払い」にはほとんど含まれていないのではないかという疑念を持っている。
これが「不払い」になるというのであれば、各社の不払い件数はこれまでの件数では済まされない。

損保各社(特に損調部門)はこのことに気がついているはずだが、金融庁から指摘されていないのか「不払い」扱いとはしていないようだ。
「契約者から請求が来ない限り支払わない」という損保の体質はどうすれば変わるのだろうか?

「まだ隠されている保険金不払い」に金融庁がメスを入れることに期待しよう。

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