東京海上日動の「特約簡素化」について思う

東京海上日動が、「保険金不払いの再発防止を図るため」、様々な特約を廃止することが明らかとなった。

一連の保険金不払いの再発防止というと聞こえがよいが、廃止する特約の種類を見て、業界人(特に損調部門)は感じることがあると思う。

「代車費用特約」・・・5種類ある代車費用特約のうち、車両の修理日数に応じて定額を支払う「定額払方式」の4特約を廃止し、実際に代車としてレンタカーを借りた場合、その実費を支払う「実損払い方式」のみ残す。


「搭乗者傷害保険」・・・実際の入通院日数に応じた金額を支払う「日数払い方式」を廃止し、ケガの部位と程度に応じた「部位症状別払い方式」のみ残す。


この2特約とも、おそらく「損害率(ロス)が悪い(保険料収入より保険会社が支払う保険金の割合が高い)」特約であり、今回廃止するのは顧客への信頼回復という「不払いの防止」という側面よりも、保険会社側の都合ともいえる「売って損をする特約の販売中止」という側面が強いのではなかろうか。

今回残した「実損払い方式」の代車費用特約などは、契約者が事故時にレンタカーを借りずに、公共交通機関で辛抱した場合など、掛け金(保険料)を支払っているにもかかわらず、保険会社からは一円も支払われないものだ。

ここでは、「新たな不払い」が起こりうる。
事故の際、保険会社側から「お客様は代車特約をお付けですので、レンタカーを金銭的な負担なくお乗りいただけますよ」ということをせず、「契約者が自発的にレンタカーを借りて、保険金の支払を求めてこない限り」支払わないことが想定される。

これは、保険会社の理屈では「レンタカーを実際に借りる」という「保険金の支払事由」が発生していないため「保険金不払いではない」というだろう。

しかし、保険会社側から事故の際に、加入の補償内容を分かりやすく説明し、積極的に「レンタカーを本会社側から手配する」といったことを徹底する「しくみ」をつくらない限り、私は実質的な意味での「保険金不払い」体質から保険会社が抜け出すことはないと思う。


東京海上日動の今回の発表に各社はおそらく横並び的に追随して特約の廃止を打ち出してくるだろうが、それだけに終わるのではなく、保険会社側から、契約者に積極的に保険金の支払の案内をする保険会社が現れることに期待したい。

<フジサンケイビジネスアイより>

東京海上日動が特約統廃合 自動車分野で18種類廃止へ
FujiSankei Business i. 2007/1/16  

損保最大手の東京海上日動火災保険は15日、主力商品である自動車保険で、顧客が選択する付加契約である特約を18種類廃止するなど、2008年2月の契約開始分から保険商品の仕組みを簡素化する方針を明らかにした。損保業界では商品構成の複雑さなどから大量の保険金の不払いが明らかになっており、特約の統廃合で不払いの防止を図る狙い。

 商品簡素化の中心となるのは、契約者が事故を起こした際に代車費用を補償する特約。代車に関する4特約を廃止し「事故時レンタカー費用補償」に一本化する。

 東京海上日動は、自動車保険の不払いが5万4000件(昨年9月末)判明しているが、このうち代車関連特約の不払いが1万件と多かった。特約の設定や保険金支払い方式が複雑になりすぎて支払うべき保険金の把握が困難になっていたためで、商品自体の簡素化によって改善を目指す。このほか、ゴルフのホールインワン特約など自動車保険と直接関係のない特約も一部廃止する。

 すでに12日には、販売代理店に対して自動車保険の統廃合を通知。廃止する特約は契約更改の際になるべく販売しないように求めている。

 同社は個人向けの全特約1700種類を約850種類に削減する方針を打ち出しており、今回の商品の簡素化はこの一環。今後は火災保険や傷害保険などでも同様の特約の見直しを実施する。

メインサイトはこちらから
自動車保険を元損保社員が比較ランキング


価格.com 自動車保険